弊社は、お客様の動画サイトを構築するお仕事をたくさんお任せいただいており、その際に動画を第三者にコピーされたくない、という相談をよくいただきます。
その中でも「コピーをされないようにするためDRMをかけたい」というご相談がよくあるのですが、本来の意味で「DRM」という単語を使われているケースとそうでないケースがあり、どのレベルのコピー防止が必要なのかが分からないときがあります。
本稿では、動画配信を行う際に、きちんとコピー防止の検討ができる知識として、コピー防止策にはどのようなものがあるのか、ということをまとめます。
動画のコピー防止方法いろいろ
まずは代表的なコピー防止策をいくつかあげます。
どういったもので、どのようにコピー防止を行うのか、ということも簡単にまとめます。
IP制限(コスト:低)
特定のIPアドレスからのアクセスしか、動画を視聴できなくする。
社内からのアクセスだけ動画視聴させるなどの、IPベースでの視聴制限をかけることができる。
外部からの不正アクセスを防ぎ、部外者による動画データのコピーを行えなくする。
一般的にはサーバーの設定のみですむため、そこまでコストはかからない。
リファラー認証・ドメイン認証(コスト:中)
動画を再生するためのプレイヤーが、特定のドメインのサイトにないと再生ができなくする。
たとえば、aaaa.comに埋め込まれた動画プレイヤーでしか再生できなくしておくことで、ログインした人だけしか見られなくする。
ほかのサイトに動画プレイヤーを転載しても視聴できないなどの制限をかけることができ、転載されることでの動画の意図しない拡散を防止できる。
動画配信専門のプラットフォームにはついている場合がほとんどで、動画配信プラットフォームの利用費内で賄える場合が多い。
ワンタイムURL(コスト:中~高)
動画データを呼び出すことができるURLをアクセスの度変える。
悪意のある視聴者が動画データのURLを突き止めて外部に公開しても、次回のアクセス時には動画データの呼び出しURLが変わってしまっているので動画の視聴やダウンロードができない。
ゼロベースでシステムを開発する場合はそれなりにコストがかかる。
セッションチェック(コスト:高)
システム的に動画視聴を許可されたユーザーかどうかということを確認したうえで、動画データを転送する。
ログイン済みの会員なら動画データを転送して視聴させる、購入済みのユーザーなら視聴させるなどの制御を行うことができる。
ワンタイムURLと組み合わせることで、外部に動画のURLが公開されてしまっても試聴条件を満たしているユーザーでなければ動画データを入手し動画を視聴することができない。
ゼロベースでシステムを開発する場合はそれなりにコストがかかる。
ソーシャルキャストには本機能が基本でついている。
暗号化配信(コスト:中)
動画そのものを暗号化し、再生時に復号しないと視聴できなくする。
何らかの方法で転送されてくる動画データをコピーしても、暗号化されているのでそのままでは再生ができない。
暗号化された動画配信データと暗号化データを復号するキー両方を受信できる状態にないと、動画が視聴できない。
DRMを使った動画配信(コスト:高)
暗号化配信と同じような機能だが、一般的に汎用化されている暗号認証機能付きの動画配信をさすことが多い。
単にデータを暗号化して転送するだけではなく、様々な機能を付加できる。
主には以下。
・GoogleのDRM技術、Widevine
・AppleのFairPlay
・MicrosoftのPlayReady
上記の導入はそれなりのコストがかかる。
ただし、上記とは別に、独自の暗号化配信をDRMとうたっている企業も多数ある。
大まかには上記のようなものが、コピー防止の対策として存在しています。
まずは、コピー防止策がDRMだけではないということを認識し、それぞれがどのようなものなのかをある程度把握しましょう。
どの程度のコピー防止が必要なのかを考えよう
会社さまによってコピーされたくない、という理由は様々かと思います。
いずれにせよ、動画のコピーを完全に行えなくすることはできませんから、重要なのはそのうえでコピー防止にどれぐらいのコスト(費用)をかけることができるか、という点になります。
どのようなコピー防止を幾らで行うのかということを理解しましょう。
コピー防止対策について説明が必要なビジネスパートナーがいるのであれば、このようなことをいくらかけて行う、という説明を行いましょう。
正しい知識をベースとして、どういうコンテンツであるから、どのようなコピー防止策が必要か、いくら費用をかけられるかというところをきちんと考えて実施することが重要です。
正しい知識を得ずに、「DRMはかけないとだめ → かけると配信コストが高くなる → 収支予想が良くなく事業計画頓挫」、という流れほど、もったいないことはありません。
DRMという言葉にとらわれず、コピー防止策を考えよう
一般的な動画コンテンツであれば、DRMをかけることは考えなくていいでしょう。
映画など、非常に高いレベル版権管理が必要なものであればDRMは検討に値しますが、セミナーの動画や研修動画、何かのプラクティス動画、自社制作の動画コンテンツなどであれば、暗号化配信までで十分です。
弊社のお客様にもコピー防止の説明を行っていますが、最終的には「運営コストを下げるため、セッションチェックを行えば暗号化配信も必要ない」という判断も多く、事業の運営コストを下げることと、コピー防止をどこまで行うかということをトレードオフの関係として考えてもいいでしょう。
国内テレビ局などでもDRM付きの配信は行わず、暗号化配信で十分という判断をしています。
どちらにせよ、コピー防止に関してきちんと把握を行い何を行うべきか検討をする場合には、採用する動画システムの会社などに、どういった方法でどの程度のコピー防止策をとっているかどうかを確認し、必要としている対策に対し十分かどうかを検討することが重要です。
十分でなければ、このレベルまでコピー防止をする場合どうしたらいいか、ということを相談しましょう。
その場合どの程度コストをかけることができるのかということをあらかじめ考えておき、伝えることも重要です。
先述のようにコピー防止という観点では、動画の配信方式によっても変わってきます。
主な配信方式としては「ストリーミング」と「プログレッシブダウンロード」がありますが、こちらについては下記の記事をご覧ください。
完全なコピー防止策は存在するのか
動画配信は、オンラインの場合でもダウンロードの場合でも、最終的に動画を視聴している=映像を見て音を聞いている、ということになるため、単純に書いてしまえばそれを録画すればいいわけで、どこまで技術的なコピー防止を行っても、コピーされないという事はありません。
もちろん、絶対にコピーされない方がいいのですが、動画コンテンツを配信する以上これは仕方がなく、防ぐことができません。
データをサーバーからクライアントに転送する(コピーする)ことが動画配信とほぼイコールになるインターネット動画配信では、コピー防止は今後も非常に難しい課題の1つと言えるでしょう。