各種報道を見る限りでは、活動家や愉快犯による偽情報の拡散・ねつ造だけではなく、国家による世論誘導にも利用されている例が確認されたという発表もあります。
2019年に「Deepfake(ディープフェイク)とは?:解説とその影響」というコラムを執筆しましたが、残念ながらその中に書いたことが現実になってきています。
- どのような偽情報、騒ぎがあったか
- なぜ、偽情報を信じてしまうのか、それが蔓延してしまうのか
- 偽情報をなくしていく取り組み
どのような偽情報、騒ぎがあったか
いくつかご紹介します。
1.偽ゼレンスキー大統領の降伏呼びかけ動画
ディープフェイクを利用した政治的な扇動の動きについて、近年で最も衝撃的だったのは、ゼレンスキー大統領の降伏呼びかけ動画でした。
当時はかなりの騒ぎになり、Meta社では該当の動画を削除することに。
ディープフェイク自体の出来があまりできがよくなかったため、騒ぎになっただけで大きな動きにはなりませんでしたが、もしクオリティが高い偽動画がSNSで拡散してしまい、信じる人が増えていたとしたら、とんでもないことになっていた可能性は否定できません。
2.米銀行取り付け騒ぎ
偽情報とは少し違うかもしれませんが、誤った情報がものすごいスピードで拡散された結果起こった出来事です。
日本経済新聞の記事がわかりやすいため、ここでは詳しく書きませんが、
- シリコンバレー銀行が安定化のため資金強化を行った
- 資金強化はこの先経営難が起こるためだと勘違いされ、SNSに投稿された
- 顧客の企業が銀行の行く末を懸念しはじめ、SNSで拡散。騒動になる
- 一斉にシリコンバレー銀行から引出しを実施
- 48時間たたず破綻
シリコンバレー銀行が経営難になるという憶測がSNSで拡散された結果、取り付け騒ぎが起こり結果48時間たたずに経営破綻してしまうということに。
なお、銀行が破綻するかもしれないというネガティブ情報の拡散に関しては、2割が悪意のあるアカウントによるものだったと推定されています。
また結果として経営破綻はしませんでした。
3.間違った医療情報
これは実際にSNSでよく目にするのではないでしょうか。
ワクチンや命に係わる病気について、民間治療を推奨したり標準治療はよくないということを訴えるなどしている方がいらっしゃいます。
さらに良くないのが、それを、発言力の高い方(政治家やタレントさんなど)が拡散してしまったり、場合によっては公の場で発言するということも起こっています。
主義主張はいろいろですので、何が正しい・正しくない、ということはここでは書きませんが、命にかかわる病気の治療に関して、間違った情報を信じてしまうことで病気が放置状態となり、命を落としている方も出てきていると、がん専門医の方が発信されています。
どのように偽情報が蔓延していっているのか
エコーチャンバー現象
自分と異なった意見が聞こえてこなくなってしまうのです。
検索エンジンのノイズと恣意的なサイトへの誘導
間違っている医療情報がGoogle検索で上位表示されてしまっており、問題になったことも過去にありました。
偽情報をなくす取り組み
場合によっては人の命にもかかわります。
ディープフェイク検出AI
精度の高いディープフェイクを作成するAIとのいたちごっこになっている面もあるようですが、偽物を判別するために必要な取り組みです。
YouTubeでは間違ったがん治療の紹介動画を削除
YouTubeへの動画投稿も多分に漏れず、間違った治療情報があふれてしまっており、視聴者の生命にかかわるケースも出てきているはずです。
YouTubeが、「有害または効果がないと証明されたがん治療」を宣伝するコンテンツや、視聴者が専門的な治療を受けることを思いとどまらせるようなコンテンツを削除すると発表しました。
X(旧Twitter)のコミュニティノート
Xでは、承認されたユーザーが他人のツイートに補足情報を追加できるようになりました。
コミュニティノート、という機能です。
間違っている内容や情報が不足している発言に対して、コミュニティノート執筆が許可されたユーザーが詳細なコメントをつけることができるようになっています。
以下、コミュニティノートの例です。
終わりに
主観を持とうとしない、ということの表れの一つではないだろうかと感じています。
ただそれに流され、自分で見聞きし考えて「自分の結論」を出さないことは危険なのではないでしょうか。