フレームレート(fps)、ビットレート(bps)、画面解像度については個別の記事で、それらがどういったものなのかという事について学びました。
それぞれの記事でも少し触れていますが、今回はそれぞれを簡単におさらいしつつ、フレームレート、ビットレート、画面解像度の3つの数値と、動画の画質、ファイルサイズの関連性についてまとめます。
おさらい
フレームレート(fps)とは
動画の1秒間のコマ数のこと。fpsと表記。(frames per second)
30fpsであれば、1秒間に30コマ。
映画は24fps、地上デジタル放送は30fps。
ビットレート(bps)とは
動画データが1秒間にどれぐらいのデータ量を使っているかという数値。
bpsと表記。(bits par second)
1Mbpsであれば、1秒間の映像に1メガビットを使っている動画ということ。
YouTubeのHD画質は最高2Mbps。ブルーレイビデオは最高54Mbps。
画面解像度とは
動画の大きさ(面積)のこと。
1080p、720pなどと表記。
1080pはフルHD、720pはHD、2160pは4K解像度。
1080pでは、動画が縦1920ピクセル、横1080ピクセルで表現される。(ピクセルについてはこちら)
画質とは何かという事を考えてみよう
フレームレート、ビットレート、画面解像度とも、画質の良しあしに大きく影響を与えるものです。
それでは、画質の良しあしというのは、どういったものでしょうか。
一度明文化してみましょう。
- 動画にノイズがでていないか
- 解像度が高く、細密な表現になっているかどうか
- 秒間のコマ数が多く、動きが滑らかになっているかどうか
基本的にこれらがクリアできていれば、画質が高いと言っていいのではないでしょうか。
ということは、
- ビットレートを高くすることで、動画にノイズがでないようにする
- 解像度を高くして、細密な表現にする
- フレームレートを高くして、秒間のコマ数を多くする
ことで、画質をよくすることができるということになります。
これらの事は間違いがないのですが、大きな問題をはらんでいます。
画面解像度とフレームレートを高くするとどうなるのか
では、画面解像度とフレームレートを高くすると、どうなるのでしょうか。
画面解像度
まずは画面解像度を高くした場合のことを考えてみましょう。
たとえば、フルHD解像度の動画と4K解像度の動画で考えてみます。
4K解像度は、フルHD解像度の4倍の面積となります。
ということは、4Kを描画するために必要なデータ量は、単純計算でフルHDの4倍必要になるという事です。
1MBであった場合、4MBのデータ量が必要になってきます。
フレームレート
次にフレームレートを考えてみます。
30fpsと60fpsではどのような差が出るでしょうか。
このように、フレームレートが高くなればなるほど、1秒間の描画に必要なコマ数が上がることになります。
1コマ1コマが画像データと同じようにデータ量を持っていますから、フレームレートが上がると1秒間に必要になる画像の枚数が増える=データ量が増える、という事になります。
30fpsと60fpsの比較では、単純計算で倍のデータ量になるという事になります。
では、上記の例を組み合わせて考えてみましょう。
- フルHD・30fps
- 4K・60fps
2は、1の何倍のデータ量になるでしょうか。
画面解像度で4倍、フレームレートで2倍になりますから、データ量としては8倍になりますね。
動画データはただでさえ大きなものになります。
1のデータ量が100MBだった場合、2は800MBにまでなる可能性があるということです。
ただし、考え方としては上記に間違いはありません。
インターネットで配信する動画はデータ量を小さくする必要がある
ネット配信を行う場合、動画のデータ量は極力小さくする努力が必要です。
- 動画を見る方が必要以上のデータをダウンロードしなくてよくするため
- 動画配信サーバーの負荷、回線の負荷を下げるため
- 視聴の際にスムースに再生を開始させるため
一番大きいのは視聴者への影響です。
必要以上の画面解像度やフレームレートにすることで、膨大な動画データを受信しなければならなくなるため、視聴者の負担が大きくなります。視聴ができないという問い合わせも増えるでしょう。
画面解像度やフレームレートの記事でも紹介をしましたが、いくら高い画面解像度やフレームレートの動画を配信したとしても、視聴者が利用している再生ハードウェアが、高い解像度や高いフレームレートに対応していなければ意味がありません。
この辺りは過去の記事を参照なさってみてください。(画面解像度/フレームレート)
ですので、常識的な範疇で、見せたい動画に必要な最低限の画面解像度とフレームレートをまずは決めることが肝心です。
たとえば、セミナーや研修の録画に、フルHDの画面解像度や60fpsのフレームレートは必要でしょうか?
これは必要ありません。720p・15~20fpsで十分です。もっと解像度を下げてもいいでしょう。
スポーツの動画ではどうでしょうか。
フルHDの方が好ましいですね。動きも滑らかに見せられると良いので、フレームレートも高い方が良いでしょう。
一般的な数値がわからないという場合は、地上デジタルテレビがフルHD程度で30fps、というところをイメージしてみましょう。
YouTubeのHD画質は、720pで30fps、最高2Mbpsとなっています。
解像度とフレームレートの目安を決めてから、ビットレートを調整する
Adobe Media Encoderなどの動画変換ソフトを利用することで、解像度・フレームレート・ビットレートのすべてを調整(エンコード)することができます。
ただ、すべての数値をいじり回すと何をどのようにしたらいい画質になるのかがわからなくなってしまうので、画面解像度とフレームレートをどの程度にするかという事を決めて、最終的にビットレートの調整を行いましょう。
何度もエンコードをしてみて、ビットレートを許せるぎりぎりの画質のところまで下げていきます。
ビットレートを下げる=1秒間に使えるデータ量を下げる
という事ですから、調整しながら画質を下げていくという事をやりましょう。
0.1Mbps単位でビットレートを削りましょう。最終的には0.01Mbps単位で削る努力をするととても理想的です。
ここをさぼると、無駄なデータ量の動画が出来上がってしまいますからしっかり行います。
ギリギリのラインを見いだせたら、それがすべてのバランスが取れた動画ファイルという事です。
それでも動画のファイル容量が大きいな・・と思うこともあるかもしれません。
たとえば、ファイルサイズが2Gになってしまっていたらどうでしょう。
さすがに視聴者の立場になった場合、ファイルサイズが大きすぎますね。
そういった時は、以下のことができないかを考えてみましょう。
- 画面解像度をもっと下げることはできないか
- フレームレートをもっと下げることはできないか
- ビットレートをもっと下げられないか
- 動画を分割することはできないか
2時間~3時間の動画は長すぎますから、30分~1時間区切りにしたいところです。
欲張らないこと・一般的な数値を知ることが重要
インターネット上の配信で4Kや60fpsというのは、現状一般的ではありません。
MAXでもフルHD、60fpsというところではないでしょうか。
また、先ほども記述しましたが、一般的なセミナーや講義の動画を配信するのにフルHD画質は必要ありません。
すべてのケースにおいて画質が高い方が良いのは間違いがありませんが、そこにこだわってもインターネットの動画配信では何もいいことがありません。
動画サイトのご担当者さまは、本記事で記載した、画面解像度とフレームレート、ビットレートの関係性や一般的な数値をしっかり覚えておいてください。
そして、映像の制作会社、担当者がインターネット動画の基礎知識を知らなかった場合においても、適切な指示を出せるようにしましょう。
映像制作を行っている個人、法人さまの中には、まだまだインターネットでの動画配信知識が薄い方も多いです。
担当者として、不適切な動画配信にならないよう、しっかり気を付けましょう。