Twichは、ゲームのライブ配信の分野において世界トップシェアの動画配信プラットフォームです。
YouTubeやマイクロソフトが競合として名乗りを上げてもその人気やシェアはびくともせず、若い世代に絶大な人気があります。
そんなTwitchですが、ITとeスポーツにおいて先進的な国である韓国において、2024年2月27日いっぱいでサービス提供を終了しました。
これは一体どういうことなのでしょうか。
普通に考えれば、韓国ではかなりの人気サービスになっているはずで(実際なっていました)、クローズせざるを得なくなる理由が考えられません。
探っていくと、インターネットを利用する我々全員が他人事とは思えない理由がありました。
動画配信で消費される通信帯域の維持は、だれがコスト負担するのか
インターネット動画配信で利用する通信データ量は、世界中のインターネット通信のデータ量のどれぐらいの割合を占めているかご存知でしょうか?
なんと8割を占めるといわれています。
8割です。
また、
- YouTubeに限ると全世界の通信データ量の15%
- 同、NETFLIXは11%
を占めているといわれています。
米サンドバイン社のCOVID-19 Global Internet Phenomena Reportより
COVID-19 Trends
Sandvine Internet Updates on the latest COVID-era Trends
では、その通信データを送信するためにかかるコストは誰が負担しているのでしょうか。
ちょっとピンとこないかもしれないので、例を書いてみます。
動画データは誰が手元に届けてくれるのか
NETFLIXで動画を視聴するときは、NETFLIXが保持するサーバーからあなたの端末にデータが送信されます。
そのときに、NETFLIXが保持しているサーバーからあなたの端末に直接データが届くわけではなく、様々な事業者が維持している物理的な回線を通って手元に届きます。
たとえば、アメリカのサーバーのデータを手元で見るためには、
- アメリカから日本まで海底ケーブルを通り
- 日本の基幹回線をとおり
- NTTの回線をとおり
- NTTドコモの電波に乗って、、
などなど様々な事業者が管理する物理的な回線を経由して手元にデータが届きます。
他社の動画配信のために通信インフラを維持しているの?
その中の通信ルートに入っているNTTドコモは、全トラフィックの1割を占めるNETFLIXの動画配信を維持するためにドコモ利用者からお金あつめて、通信インフラを維持しているのでしょうか?
他社の発したデータを、もっと言えば8割の動画データを届けるためにインフラを維持しているわけではなく、様々な人々が問題なく使えるような回線維持をしているはずだったのに、8割を占めさらに増えている動画データのためにインフラ強化をせざるを得ない状況が発生しているわけです。
上記のような実態があるため、大量の通信トラフィックを発生させる事業者は、各国ISPに対してある程度のお金を支払っています。
実際は、小規模な配信サービスがこの費用を負担することはなく、国内の通信量である程度の割合を占める事業者にコスト負担をさせているとのことです。
また上記はだいぶ大雑把に書いています。理屈は間違いありません。
韓国の「ネットワーク使用料法」
ここで韓国Twitchに話を戻しますが、韓国では他国よりもこのトラフィック量に対して支払うコストが(法律によって)高く設定されており、それにかかるコストがTwitch事業で得られる売上を上回り続けることが予想されたため、サービス停止となった、ということなのです。
「大量の動画データを送信するコスト」を、動画配信事業者が支払えなくなってしまった場合、このようにサービスがクローズされることに直結し得るということなのです。
なお、韓国Tiwtchのサービスクローズに関しては、Twitchの親会社であるAmazonの意向によるものと考えられます。
日本ではどうなのか
日本では光ファイバー網が整備され、通信回線には余裕がありそうな感じがあるかもしれませんが、
実は全くそういうわけではなく、コロナ禍では通信回線の帯域が足りなくなる寸前になっています。
ですから、そう遠くない未来に日本でも同じような問題が起こる可能性は否定できないのです。
動画配信事業者の収益性が失われてしまった時に、だれがそのコストを負担するでしょうか。
ISPでしょうか、動画配信事業者が上乗せして利用者から徴収して払うのでしょうか。
それともサービスを終了させるのでしょうか。
いずれにしても、あまり他人事ではないことが分かっていただけたかと思います。
我々も動画配信をするためのシステムを提供している以上、通信料を削減するための啓もうなどを続けていきたいと考えています。
小規模であっても、動画配信事業をやられている各社さまは、不必要な高画質(高いビットレート)での配信はなるだけなくしていきましょう!